そのトウモロコシには『秘密』がある。

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ゆめのたねファームのトウモロコシを取材に行ったら、スーパーでは知り得ないとんでもないことを知った!記者みあさあかねのドタバタ珍道中の巻

           

ピンチ!雨が降ると

 取材写真
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今回はゆめのたねファームのトウモロコシを取材!

トウモロコシって背が高くて、向こうが見えないくらいの緑の畑になるんだよね〜ジブリ作品となりのトトロで見たことあるよ〜たのしみ〜♬なんて呑気に畑に到着したら

な、な、ナンジャコリァァァ!

ちまっと背の低い穂の出たこいつは。

『お前さんは本当にトウモロコシなのかい?』

小さい子を覗き込むような姿勢で話しかけてしまうサイズ。

『はい。トウモロコシです』

返事をしたのはもちろんトウモロコシではありません。現れたのは生産者の高木宏道さん。

どどーん!と現れた高木さんの体はプロレスラーかのようにがっしりしていて、並んだトウモロコシたちはまるで幼稚園児の列のようにより小さく見える。

どうしてスラリと背の高いトウモロコシがこんなに可愛らしくなったかというと、時期外れの長雨の影響で定植が遅れたことが原因だとゆめのたねファームの高木さんは語る。

え?

農家さんってこれが収入源でしょ?それは…やばいのでは?

『はい。やばいですね』高木さんは笑顔のまま答える。

通常300坪(コンビニ一軒がだいたい30坪だからコンビニ10軒分の土地)に4000本の苗を植え、3600本収穫できることが理想。だが、根っこや土、天候不順でそうはうまく行かない。

★ここで浮かぶ疑問点★

そもそも一本の苗からトウモロコシって何本とれるの???

           
トウモロコシってどんな風に実ってるの?読んでるあなた、知ってますか?
             

トウモロコシってどんな風に実る?!

 取材写真
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トウモロコシって一本の苗から何本穫れるの?

え?!知らない!スーパーで並んでるのしか見たことないから分からない!

わたしも一緒です(笑)

でもトウモロコシって沢山穫れるイメージ!そして安いのだと一本100円くらいだけど立派なのだと200円くらいするよね!実は不作でもめちゃ儲かる作物なんじゃない?などと大人な心が悪い計算をし始めます。

 

『じゃあ見てみましょう!』

トウモロコシ畑の番人のように、のっしのっし高木さんは行く。

この緑の中から収穫物を見つける農家さんの目は本当にすごい。畑の土に足をとられそうになるのを必死でこらえる私は周りを見る余裕すらない。

『寒暖差で先がキュ〜っと細くなったものが美味しいんですよ』

秋の朝晩の冷え込みで糖度が上がりおいしくなるのだという。

『さぁ、これですよー』

工エエェェ(´д`)ェェエエ工

一本から一本しか生えてないですが。

そう!一本の苗から一本しかできない!

なぜなら一つのトウモロコシを大きく甘くするために生えてきた小さなものは先に取ってしまいヤングコーンとして売られるためである。ただしそれはヤングコーンを販売する許可をもらい、農薬をおさえている農家だけで通常のトウモロコシ農家はヤングコーンの販売はない。

つまり、一本の苗から本当に一本しか収穫できないのだ。

て…てことはですよ

台風が来てなぎ倒されたり、雨が続いて不作だったら

………全滅のおそれが………

ガタガタブルブル(((;ꏿ_ꏿ;)))

ち、ちなみに苗、というか、種って一粒いくらなんですか?

『ああ、一粒3.5円くらいかなぁ』

え?!安っ!!

じゃあ意外とリスクが低い作物なのかも。高木さんめちゃ儲かってるのか!?やはりわたしの中の大人な心が銭勘定をはじめた(笑)

『ところでスーパーに並ぶトウモロコシに大切なことなにか分かる?』

へ?

★生産者からの出題★

スーパーに並ぶには?味?大きさ?見た目?

           
え?値段しか普段見てない!スーパーに並ぶにはなにが大切なの?
               

『価値を知る』ということ

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スーパーに並ぶにはなにが大切なのか?

急な質問に自らがスーパーで買い物するときと重ね合わせて考えた。

消費者目線で言えば、安さや新鮮さ。産地などは大切だと思う。

あとはどれだけ実用性があり、今日の食卓を助けてくれるか、野球のスタメン決めるみたいな感じですよね。

限られた予算でより良い暮らしをするため主婦のお財布の口は体にいいオイルや人気のスイーツ、流行りのハーブくらいでは開かない。

何より安さ。その安心感で買い物カゴを満たし自らも満たされているのだと思う。

そう思うと、トウモロコシは高い。

夫婦二人暮らしの私の家の食卓にトウモロコシはスタメン入りしない。

なぜなら旦那は食べるときに手がかかるものを嫌い、箸で食べれる、手の汚れないものを好むからである。

芯があることも買わない要因の一つ。

ゴミになるし、芯のギリギリまで食べられるキャベツや、捨てるところのほぼないキュウリ。より可食部が多い野菜を選ぶのは当たり前のような気さえする。

 

本題に戻りましょう。

スーパーに並ぶには

やはり、見た目と安さだと思います。

『そうなんだよ!見た目や重さが重視されて味は評価されにくいんだよ!』と高木さん

ハッとしました。

たしかに。サツマイモの安納芋などは甘さやその滑らかさで高くても買う方がいます。スイカや桃や梨などは糖度まで数値化されカットフルーツになってもその数字が書かれています。トマトや新玉ねぎなどのポップにも甘さや味の特徴が書かれ差別化が進んでいます。

でもトウモロコシは?

大体想像した通りの味。食べるときもバター醤油味などの濃い味付けかサラダにのせてドレッシングをだばだば〜とかけて食べる。

トウモロコシの味?

『トウモロコシは美味しいんだよ!でも本当の美味しさは虫が知っているんだ!』

む、虫??……腹の虫?(笑)

 

★ここで浮かんだ疑問点★

なぜトウモロコシの味は期待値を超えないのか

           
トウモロコシって、美味しいですか?
               

本当のトウモロコシ

 取材写真
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『トウモロコシは美味しいんだよ!』

でも私。美味しいトウモロコシに出会ったことないです。

『それはね、』

高木さんは秘密っぽく笑った。

トウモロコシ畑の中で一段と実ったものの皮を剥くときれいな黄色の粒の中に何箇所か実がグチュっとしぼんだ部分がある。腐っているわけではない。これは虫の食べたあとなのだ。これが甘さを知る虫なのだという。

トウモロコシの糖度はフルーツに匹敵し、ゆめのたねファームのトウモロコシは柿や梨のような甘さのものもあるという。

虫はこの糖度につられてやってくる。

でもですよ!虫に食べられちゃうじゃないですか!

『その通りっ!』

どーん!!と顔がアップになったような高木さんの迫力に思わずひるむ(笑)

『知ってる?』と話は続く。

上物の大きさも良いトウモロコシは大体一本200円ほど。だが大きく実るほど糖度も増し、虫も寄ってくる。虫に食われた部分はそのままでは売れず、そこを切り取る。すると売値はマイナス50円。つまり150円になる。

じゃ、じゃ、じゃあ!苦労しても綺麗なままのトウモロコシとるのめちゃ大変じゃないですか!

『いやいや、だから虫がつく前に収穫するんだよ。他所は』

へ?じゃあ高木さんもそうしたらよいのでは?

『でもまだ味がのってないから収穫しないのよ』

いや、そしたら虫が食べちゃいますよ

『そうなんだよねー』

え?なにいってんすか?(笑)

『だからトウモロコシは期待値を超えない味なんだよ』

………(´⊙ω⊙`)!そうゆうことか!

つまり、スーパーに並ぶには味ではなく量や数、重さが重視され、見た目が劣る虫食いは買値を叩かれる。

だからほとんどの農家が虫が食う前のまだ味がのらない若いトウモロコシを収穫し、数と量、見た目をクリアし収入を確保する。だから期待値を超えない、特に驚きもしない、二回目は買わないトウモロコシになるのか!

じゃあゆめのたねファームのトウモロコシはどうなんだ?

資料では糖度も高く、みずみずしいとは書いてあるけど。幼稚園児みたいな背丈に育ってしまっていて、おいしいのか?!

 

★ここで浮かんだ疑問点★

ゆめのたねファームのトウモロコシは本当に美味しいの?!

 

 

           
じゃあ!食べてみようじゃないの!
               

実食!ゆめのたねファームのトウモロコシ!

『はいっ!』

差し出されたトウモロコシ粒は綺麗に揃い、つやつやしていて、ふっくらした実一つ一つが見ているだけでもたくさんの水分を含んでいると分かる。

ずっしりとした重さ。

『かじってみて』

え!トウモロコシって生で食べたらお腹壊しそう!( ;∀;)え!茹でないんですか?せめてレンジでチンさせて!(笑)

『大丈夫だから、ほら!』

うながされるまま恐る恐るかじると、、、

ぷしゅ!

かじったそばから弾ける水分。瞬時に口をすぼめたが間に合わない。そして口に広がる甘みは柿のように濃厚で、梨のようにさらっと喉を通っていく。

恐る恐るだったひとくちが次は思い切った一口に。桃を丸かじりしているかのようにじゅるじゅると水分をすすりながら青空の下食べるトウモロコシは幼い日に食べたトウモロコシより格段に甘かった。

思わず畑に座り込み空を見上げた。

一粒3.5円の種がここまで立派に育つのは並大抵なことではないだろう。肥料や農薬、農業機械だってタダじゃない。天候に一喜一憂し、虫に食われたらカットして、ただ美味しいトウモロコシを作るためだけに……たくさんの汗と涙と体力を振り絞る。

ただ、美味しいトウモロコシを届けるために

 

 

安さで買い物カゴと冷蔵庫を満たし、あまり美味しくないね、と残す。こんなに高いなら買わない!と見向きもしないそんな自分が恥ずかしくなった。

SDGsが叫ばれてから何年経ったろう。食品ロスやごみ問題。まだまだ山積みなのに世間は安さ戦争だ。

でもそんな世の中だからこそ本当に美味しいものを食べてほしい。きっと心から満たされるはずだ。

『ね、おいしいでしょ?』太陽のような高木さんの笑顔に泣きそうになった。

おいしいです。

ゆめのたねファームのトウモロコシには当たり前の『おいしい!』ではなく、心をポカポカにしてくれる物語があった。

みなさまもぜひ、ご賞味ください。

           
美味しいトウモロコシたべたくなりましたか?
     
取材先情報
作り手さんの写真

高木宏道
オンラインショップ
・イオン(豊田店) ・JA産直(あいち豊田グリーンセンター松平店、三好店、畝部店)