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海苔はどこからきたの?漁師さんの養殖のお話

海苔といえば、おにぎりやお寿司、さらにはラーメンなどの麺類までにも、いろんな料理に使われる日本の伝統的な食べもの。

海苔

だけど、もちろん海苔って、あの四角い形のまま海に泳いでるわけではないんですよね(笑)

そこで、今回は、お魚屋さんである尾張まるはちさんと一緒に、「鬼崎のり」と呼ばれる海苔を作っている、愛知県常滑市の鬼崎漁協へ行ってきました!

鬼崎漁港に行く「こだわりん」

ここでは、漁師さんたちが海苔を養殖し、普段みなさんが食べているような「板のり」に加工していきますよ。

今回は、海苔の漁師さんがどのように養殖しているのか、ストーリーを見ていきます。

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ここ、鬼崎漁協で育った

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10枚入り 950円

そもそも、海苔を養殖する理由

鬼崎漁協の漁師
引用:鬼崎漁協の漁師さん(青年部HP)

もちろん、海苔って自然と海に生えてるものもあります。これを、「岩のり」といって、厚みがあり、歯ごたえも硬くて、磯の香りの強いものが多いです。

岩のり
引用:(越前宝や「天然岩のり」)

でも、岩のりは、島根県や北海道南西部といった、ほんの少しの地域でしか流通することができないんです。

それだと、本当に少しの量しか採れないし、安定した量を日本人が食べられるようになるのは難しいですね。

農家さんが種をまいて野菜を育てるように、海苔の漁師さんも、種付けから出荷まで大切に育てていきます。これが、いわゆる養殖ということですね。

一概に養殖海苔と言っても、地域や収穫時期、さらには養殖の方法によっても味や食感は大きく変わってきます。

養殖海苔

海苔の種(タネ)を養殖網につけていく

<!–生海苔–>

そういえば、海苔の種って、なかなか見たことないですよね..。「どんな形してるの?」って、ちょっと不思議に..。

しかし、海苔は、種というか「胞子(めちゃくちゃ小さい)」で繁殖します。だから、人間の目では見ることが難しいようです。

ちなみに、顕微鏡で見るとこんな感じ↓ちょっとマニアックな生物の授業みたいになってきましたね(笑)

海苔の胞子

海苔が生長するためには、温度がとっても大切なんです。具体的にいうと、23℃以下になると生長することができるので温度が高い春〜秋にかけては、海苔の胞子は、カキやホタテの貝殻のなかに潜んでいます。貝の石灰を栄養にしながら、海苔の胞子はひっそりと育っているんですよ。

普通、カキやホタテといえば、白い貝殻のメージですが..、下の写真を見ての通り、海苔の胞子がついた貝殻は、真っ黒に!!

胞子のついたカキの貝殻
引用:全国漁連のり事業推進協議会

毎年9月中旬ごろ、鬼崎漁協の漁師さんたちは、真っ黒になったカキ殻から胞子を放出させて、海苔を養殖する網にくっつけていきます。(これを「種付け」と呼びます)

種付けする網

上の写真、筒状のものに白い海苔網がくっついているのがわかりますか?今から、この網を海苔の胞子が放出した海水につけるんです。

※ちなみに、筒状のでっかいのは「水車」って呼んでいるらいしいです。私たちが思い浮かべる水車とは、だいぶ違いますね(笑)

海苔網に海苔の胞子をつける

写真ではわかりませんが、写真の手前側にある茶色の棒にカキ殻が付いていて、水温を下げることによって、人工的に胞子を海水中に放出させているんです。

それにしても、中央の薄黄の部分は人間の2倍ぐらいの高さがあるから、すっごい大迫力ですね!

種付けシーズンの漁港(鬼崎付近の蒲池漁港)の様子はこんな感じになってます↓ 中央左側に並んでいるビニールハウスの中では、同時にいくつもの種付け作業が…!

蒲池漁港の種づけ

「種付け」の作業が終わり、海苔の胞子がついた海苔網。…ですが、すぐには海に出ないんです。

海苔は海水の温度が冷え込まないと上手に育たないから、海面の温度をうかがいながら、じっくり冷え込むのを待ちます。
<!–鬼崎漁協の海–>

網の張り込みしてから17日後の海水温度が20°C以下にならないと、枯死しちゃったり、芽が落ちてしまったりするんだ。だから、海苔網は時期がくるまで、冷凍庫のなかで保管されて、10月中ごろまで時を待つんだよ。」と鬼崎漁協の平野さんは語ります。

鬼崎漁協の訪問

海苔が育つのには、海水温度がとっても大切なんだな〜と思いつつも、長年養殖をしてきた知識と経験があるから、いつ網を海に張り込むといいのか、適正時期を見極めることができるんだなと感じました。

余談ですが、本当、今回の訪問では、素人のこだわりんにとっては、さっぱりな専門話が多かったです。一つ一つ理解しながらブログ書くのは、なかなかの至難でした(笑)

海苔の養殖は2方式(「支柱式」と「浮き流し式」)

10月半ば頃、海水も冷え込み、いよいよ海で海苔を育てていきます!!

海苔網を海に張り込んでいくのですが、ここから養殖には2パターン(「支柱式」と「浮き流し式」)に分かれていきます。

基本的には、水深の高さによって養殖のやり方を変えるんだとか。

① 水深が浅いところで育てる 「支柱式」

支柱式の養殖の様子

支柱式は、言葉の通り、漁師さんが支柱を海に打ち込み、その支柱と支柱に間に海苔網を張っていく養殖方法です。

支柱式の仕組み(イラスト)
Foodieより引用

ここで注目したいのは、潮の満ち引き。

海面が上がったり下がったりすることで、海苔が水につかったり(海苔が成長する)、海苔が海水から出て乾燥したりする(海苔に付着するケイソウなどを取り除いたり、海苔の芽を強くする)ことが特徴なんです。これは、天然海苔の生育に近い環境を再現しています。

漁師さんは、一回網を張ったら終わりじゃなくて、毎日、潮の満ち引きを見極めながら、「今日はこのぐらいの高さに網を張っておこう」と、海苔網の高さを調整しているんですよ。

干出作業
↑船を浸かって網の高さを調整している(干出作業)

それにしても、網を張る前に、支柱を一本一本手作業で打ち込んで行くのは、相当先が見えない力仕事ですね…。

支柱を打ち込む様子
↑漁師さんが、支柱を海面に打ち込んでいる

② 水深が深いところで育てる 「浮き流し式」

水深の浅いところで支柱式が使われていたのに対し、海底の深いところでは「浮き流し式」という方法で養殖が行われています。

海苔がある程度成長したあとに、「支柱式」から「浮き流し式」に変えるようです。

浮き流し式
instagram ひびきわたるさん より引用

こちらは、海苔網が海面にプカプカと泳ぐように張られています。養殖用の「イカリ」や「浮き」と呼ばれるものを使いこなすことで、水深の深いところでも養殖できるような仕組みになっています。

浮き流し式の海苔

浮き流し式で育てられた海苔は、ずーっと海水に浸かったまま収穫されます。そのため、黒くて艶のある海苔に仕上がることが多いと言われています。

「網の張り替え」で、高品質な「初摘み海苔」を収量をあげる

海苔の中でも、養殖網から一番最初に獲ったもの、つまり「初摘み」は栄養がたっぷりと詰まっていて柔らかいんですよ!

そのため、品質がよくて希少な初摘み海苔は、市場のセリにおいても高値でやりとりされています。

初摘み海苔
初摘み海苔

収穫して切ったところから、また伸びて育ってくるけれど、一番最初のものが一番栄養が詰まっていて美味しいんです。

緑茶なんかでも、新茶があるのと同じ原理ですね!!

鬼崎漁協のこだわりは、定期的に網の張り替えを行うことにより、「初摘み」の海苔を多く獲ること。

海苔網の張り込み

2回、3回と網を張り替えることによって、初摘みの海苔を何回も獲ることができます。

とはいえ、網の張り替えが行われるのは、12月下旬から2月中旬…。つまり、めちゃくちゃ寒いんですよ!!

海風がビュービューと吹くなか、漁師さんはただひたすら、海に網を張っていきます。しかも手作業で..。

海苔網の張り込み2

その努力といえば、並大抵のものではないと思います。しかし、私たちのような生活者が想像できる範囲を、漁師さんのひたむきな努力は超えていることは感じました。

取材先情報
作り手さんの写真

株式会社 尾張まるはち
愛知県名古屋市昭和区
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ホームページへ

今まで海苔がどんな風に育てられているか、こだわりんは全然知りませんでした。

寒さに厳しいなか、漁師さんたちの手によって、海苔が育てられていることを知ることができ、海苔1枚1枚をもっと大切に思いながら食べていきたいなと思いました。

次回は、海苔の収穫から、四角い海苔へと加工されるまでを見ていきたいと思います。

  • 次の記事はこちら

    鬼崎漁協を訪問!四角い板のりができるまで(海苔の収穫〜加工)

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    ここ、鬼崎漁協で育った
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