ラジオ番組のパーソナリティをする農家さん。「ありのままの農業を伝えたい!」
ネットで誰でも聴くことができる民間ラジオに「ゆめのたね放送局」というものがあります。
そこには、農家さんがパーソナリティをしている農業番組「ゆめのたねファーム」という番組名があるんです。
いやあ、それにしても、農家がつくる農業番組とは、実にマニアックな番組ですねえ(笑)
ちなみに、東日本チャンネルで毎週金曜日の朝8:00-8:30まで放送されています。
ゆめのたねラジオ 愛知スタジオより引用
ラジオのパーソナリティをするのは、高木宏道さん。愛知県豊田市で、トウモロコシやカリフラワー、そしてキャベツなどを栽培しています。
高木さんが農家としての日常を話すことはもちろんなのですが、それだけではありません。出演ゲストとして、ぶどう農家さんやお米農家さんや、あるいは農林高校の先生や、農カフェのオーナーなど、様々な立場から農業に関わる人たちの素顔や日常に迫っていくのです。
高木宏道さんは、農業を営む「ありのままの農業を伝えたい」という想いから、2016年に番組をもつことを決めました。
「決して『お涙ちょうだい』とかではないんだよ。春夏秋冬、そして台風や梅雨や乾季のときに、農家さんはどんな工夫をしていて、どんな気持ちで農作業をしているのか、そのありのままを知ってもらえたらと思っている。」
そう語る高木さん。
畑で活動している農家さんって、なかなか人の目に触れることは少ないですもんね。しかし、だからこそ、農家さんの生活ってどのようなものなのかを知ることにより、農業をもっと身近なものに感じられるんじゃないかなっと、こだわりんは思いました。
実際に、ラジオ収録の様子を見学してきました!
今回、ラジオ収録を行っているのは7月放送予定のもの。今回収録しているのは、パーソナリティの高木さんと、ゲストのドアンさん。ドアンさんは、べトナムからの農業研修生で、3年間日本で農業を勉強しにきました。
普段生活しているなかでは、絶対に海外の農業研修生の話なんて聞けないですよね。
今回の収録では、ベトナムと日本における、農業や文化の違い、どうして農業研修生として来日しようと思ったのか、そしてドアンさんの将来の夢などです。
会話では、「ベトナムでは、栽培のための水を、自分の農地に自由に入れることができない」「日本語の勉強をしながら、家族のためにも日本でお金を稼ぎたい」など、ドアンさんの着飾らないエピソードを沢山聞くことができました。
ベテラン農家であるパーソナリティの高木さんが、自身が育ていている作物の状態や豆知識などを合いの手で入れながら、会話が繰り広げられています。
最初は、とっても緊張していたご様子のドアンさんも、後半は笑い声が出てきましたよ☺️
ノーカットの30分が、その人の「人間性」を掘り起こす
ちょっとびっくりしたのは、カットしたりや編集したりが一切ないということです。
普通だと、生放送じゃない限り、とりあえず多めに(たいていは放送時間の3番倍以上)収録しておいて、いいところだけを切り取って編集して放送することが多いです。
(こだわりんも、今までに出演させていただいたテレビやラジオの中には、10分番組のために3日かけて撮影したこともありました。)
しかし、今回のゆめのたねラジオ収録においては、本当にノーカットノー編集で、話したことが一字一句と変わらずに放送されるんです。それも30分間。
30分って聴いている方はあっという間だったりするのですが、収録されてる側にとって、ほんと30分って話し続けるのは厳しいんですよね。
以前、こだわりんもゆめのたねラジオに出演させていただいたことがあるのですが、ほんとーに緊張します(笑)
しかし、このノーカットで30分話すところが、その人の人間性を出す大切なところなんだとか。
「ラジオだからこそ、一歩踏み込んだ話をすることができる。30分っていう充実した持ち時間があるので、それは、なぜ?なぜ?という深堀ができるんです。
経験をたくさんしてきた人ほど、その人にとっての貴重な財産が増えていく。だから、どうしてこういうことを思ったのか、こういうことをやってきたのか、その人の人間性が出てくるんだよ。」
そう、高木さんは語ります。
「逆に、表向きだけで「やりたい」と口にする人だと、掘り起こす内容が30分のうちになくなってしまうから、収録中に会話がなくなりそうなこともあって大変だったりするよ(笑)」とも。
そんな高木さんが、今までにお呼びしたゲスト農家さんといえば、本当に奇抜ま方々ばかり!!
豊田市内で、葡萄を80種も作ってる「保命園」の内田さん、
昔の小学校の移築してそこを牛舎にした「久保田牧場(現在は廃業)」さん、
愛知県で盛んなイチジクやキャベツを育てる「はいぼーなす愛楽農園」の三上さん、
などなど、今までにお呼びしたゲストは50名以上!!とてもワクワクする楽しみな30分間ですね。
ラジオを通して、高木さんが伝えたい「農業」のこと
ちょっと下世話なことなんですが、ゆめのたね放送局で番組をもつためには、お金もかかってくることなんです。
しかも、往復3時間もかけてラジオ収録に行きます。毎週、もしくは、多い時には週に3回も。
高木さん自身が畑で栽培したものを、市場に卸しすことで生計を立ているだけならば、わざわざ、こんなにまでお金も時間もかける必要ってないんですよね。
実際、高木さんが栽培している農作物の80%以上は、市場への直出荷です。(JAではなく、豊田市場に自分で出荷しにいく形ですね)
高木さんの育てたカリフラワー
それなのに、ラジオ番組をもって何年も何年も農業のありのままを伝えようとする。そこには、高木さんの農業に対する想いがありました。
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高木さんが手入れしていた稲–>
もともと非農家の家庭で生まれた高木さん。兄はIT系に勤めて第一線で活躍するなど、全く農業とは別の環境のなかで育ってきました。
しかし、物心ついたときには、「農業がしたい」そう思うようになったそうです。その決め手は、農業が衰退産業であると知ったこと。非農家であった高木さんは、そんな衰退産業と呼ばれている農業に対して、少しでも自分ができる限りのことで力になりたいと考えてきました。
「農業って3K(きつい、汚い、給料が安い)の代表だと言われているし、もちろん楽な仕事ではない。けれど、仕事であれば、どんな仕事も楽なことばかりではないし、植物は生きものだからこそ「自分の育てたい作物が実をつけたときの喜びや達成感、そして育っていく楽しさ」は計り知れないよ。
だから、ありのままの農業の姿をラジオを通して伝えていきたい。そして『農業はやりたくないもの!』という決めつけを少しでも払拭することで、「農業に触れてみたいな」っていう人が少しでも増える、農業への裾野を広げられたらと思っています。」
そう高木さんは、語ってくれました。
日本の就農者率は年々減っており、さらに平均年齢も上がっている日本の農業ではありますが、高木さんのような「日本の農業を盛り上げたい」という農家さんが増えていくことで、農業の魅力が広がることを願っています。
取材先情報
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